動脈血液ガスと静脈血液ガス
動脈血液ガスと静脈血液ガスの違いは、
細胞レベルでのガス交換がされる前か、或いは後かにあります。
pH、HCO3-、PaCO2は、静脈血液ガスでも代用が可能です。
動脈血と静脈血の成分の違い
血液ガスには、動脈血液ガスと静脈血液ガスがあります。
一般的に検査で実施されるのは、動脈血液ガス分析となっていますが、
静脈血液ガスで測定する病院もありますし、
アメリカのように外来検査で静脈血液ガスを測定する国もあります。
血液の循環
肺でガス交換された酸素濃度の高い血液は、心臓から各組織へと送られ、
毛細血管から酸素が細胞へと取り込まれます。
そして、細胞からは代謝産物であるCO2が血液に放出されます。
酸素量が減少し、CO2が増加した血液は心臓に戻り、
再び肺に運ばれて肺胞でガス交換が行われます。
このときの、心臓から各組織へ送り出される血液を「動脈」といい、
細胞レベルでのガス交換の後、心臓へ戻る血液を「静脈」といいます。
血管はあくまでも心臓を起点にした呼び方です。
ですから、ガス交換前(性質は静脈血)であっても、心臓から肺に送り出されるのは「肺動脈」で、
ガス交換後(性質上は動脈血)であっても、肺から心臓に運ばれるのは「肺静脈」です。
動脈血と静脈血の基準値
細胞レベルでのガス交換がされる前か後かという点が、
動脈血と静脈血の大きな違いです。
動脈血は、酸素を受け取った血液です。
酸素と結合した酸化ヘモグロビンが、静脈血は組織からCO2を運ぶ血液なので、
還元ヘモグロビンが多く含まれています。
そして、それに伴い、それぞれの血液に含まれるガスの成分も変わっています。
静脈血での各ガスの基準値は、
動脈血に比べるとpHではCO2が放出される分、0.03〜0.04低く、やや酸性に傾きます。
また、PCO2は7〜8Torrは高く、HCO3-は2mEq/l程度高くなります。
動脈血と静脈血の対比
pH : 動脈血 7.40 / 静脈血 7.37
PO2 : 動脈血 95Torr / 静脈血 40Torr
PCO2 : 動脈血 40Torr / 静脈血 48Torr
HCO3- : 24mEq/l / 26mEq/l
BE : 0mEq/l / 2.0mEq/l
静脈血でも血液ガス分析ができる
一般的に、血液ガスは動脈血でガス分析をします。
ですが、静脈血でも血液ガス分析はできます。
静脈血は、酸塩基平衡の評価(pH、HCO3-、PaCO2)に代用できますし、
HCO3-濃度に関しては、動脈血と殆ど代わりがありません。
ですから、HCO3-減少が基本である代謝性アシドーシスが疑われる場合は、
静脈血でも十分に評価できます。
血液ガス分析に動脈血が使われるのは、
酸素とCO2に関する情報が動脈血のほうが多く、
ガス交換機能、呼吸器や心臓の機能など血液を送り出す機能を評価することができるので、
静脈血液ガスよりも多様な疾患を把握することができるからです。
特に、低酸素血症を疑う場合は、動脈血液ガスでの分析が必須です。
患者さんにとって動脈血による血液ガス分析は負担の大きな検査です。
ルーチンで行われることが多い静脈血採血からも酸塩基平衡に関する情報が得られることを知っておきましょう。