血液pH変化を抑制
pHは、CO2の排泄量とHCO3-の排泄量によってバランスをとっています。
生体には、pHバランスを維持するために機能する「代償」という作用もあります。
代償作用とは、酸塩基平衡異常が発症した場合、血液pHの変化を正常に近づけようと、
肺(CO2の排泄量)と腎臓(H+とHCO3-の排泄量)が互いに調節を図る、生体の防御反応のことです。
pHを求める重要な式として、「Henderson Hasselbalch(ヘンダーソン・ハッセルバルヒ)の式」があります。
この式を使って実際に計算したり、数値を正しく覚える必要はないのですが、
pHが何で規定されているかが一目でわかるという点が重要です。
計算に用いられる数字は一定なので、pHを規定している分母にあるPaCO2と分子のDCO3が大切です。
pHは血液ガス中のPaCO2と、緩衝系のHCO3-の2つの因子で決まるので、
HCO3-とPaCO2の関係がどのようなものであるかについては、しっかり覚えることが大切です。
ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式
Henderson Hasselbalch(ヘンダーソン・ハッセルバルヒ)の式 とは、
pH=6.10+log([HCO3-]/[0.03×PaCO2])
* HCO3- : 代謝性因子(主として腎)、PaCO2 : 呼吸性因子(肺)
過呼吸で体内のCO2が吐き出されると、PaCO2の値は小さくなります。
分子のHCO3-に変化がないと仮定すると分子だけが小さくなるので
pHは7.40よりも高くなり、アルカリ性(アルカレミア)になります。
そして、COPDのようにCO2が増加している状態では、
分母であるPaCO2が大きくなります。
そしてpHは7.40よりも低くなり、酸性(アシデミア)になります。
分子のHCO3-だけが増減した場合も同じように考えることができます。
ですが、生体はなるべくpHの変動を抑制しようとしますから、
あとは比率の問題です。
HCO3-が下がれば、もう一つのpH規定因子であるPaCO2も下がれば良いですから、
身体は呼吸回数を増やしたり、大きく深い深呼吸をするなどしてCO2を多く排出し、
PaCO2を下げ、pHの変化を小さくしようとします。
このように、互いに補正し合い、酸性、或いはアルカリ性に傾きかけたpHを
正常に戻す働きをするのが「代償作用」です。
とはいっても、代償作用にも限界があります。
通常HCO3-は、24mEq/l、PaCO2は40Torrですから、
HCO3-が23mEq/lになるとPaCO2は、38.8Torrになる計算です。
HCO3-が減少するアシドーシスに対しては、
HCO3-が1mEq/l減少するとPaCO2は1.2Torr減少します。
しかし、PaCO2の低下は最大15Torrまでで、それ以上の代償は行われません。
つまり、完全には代償されないということを理解しておくことが必要です。